辻本好子のうちでのこづち

No.020

(会報誌 1996年8月15日号 No.72 掲載)

COML110番を開設して
患者が主体的になる相談とは

 COMLの電話相談は6年を経て、総数7000件を超えようとしています。患者が医療の主人公。どういう医療を受けたいかを自分自身の問題として考え、医療者に対してその思いを明確に伝え、安心し納得するために必要な質問や相談は遠慮せずに求める。そんな患者からの働きかけの重要性を、電話相談を通して呼びかけつづけています。

変わり始めた患者の意識を支援

 スタート当初、愚痴や不安を訴える相談者にCOMLが呼びかける主体的医療参加の提案やアドバイスに対する反応は「たしかにCOMLさんの言うことは理想です。でも……」と鈍く、ほとんど諦めきっているような答えが返ってきたものです。ところがここ2、3年、わずかながら相談内容に変化が見られます。もちろん電話をかけてきた動機や背景には不安や不満、不信感が潜んでいますが、単に愚痴さえ聞いてもらえればいいというのではなく、問題解決のためにどうすればいいかを「一緒に考えて欲しい」という相談が少しずつ増えているのです。国民総医療不信、患者の権利意識の高まりなど激しい時代の動きのなかで、伝統的医療観がガラガラと音を立てて崩壊しようとしていることを実感させられます。
 病気は日常に突然訪れる非日常。「あ・うん」の呼吸が大切、自己主張は美意識に反する、集団のなかでなるべく目立たないようにと育てられてきて、患者になったからといって急に主体的になれるはずもありません。 COMLの電話相談は、抱えこんだ思いを言語化できないで苦しんでいる患者や家族の「医療者との会話の予行練習の場」であって欲しいという願いもあって、30分40分ときには1時間以上にも及ぶ患者や家族の訴えにじっくりと耳を傾けているのです。

専門家にありがちな一方的な情報提供

 このたびの3日間の「特設110番」は合計26時間、5本の電話を57人のスタッフが入れ替わり立ち替わりで担当しました。日常的なCOMLの電話相談との違いはドクターやナース、そして今年は延べ36人の薬剤師の協力が得られたこと。新聞記事で事前に紹介されたことや当日朝の地元ラジオに生出演してPRしたこと、さらに開始早々の模様を2つのテレビ局が取材して昼と夕方のニュースで放映してくれたことなどもあって反響は大きく、届いた相談は通算270件にもなりました。
 薬剤師が直接対応するというPRでかかってきた電話のほとんどは、薬の副作用情報を求めたり飲んでいる薬の不安を訴えたり。ところが薬剤師の対応を横で聞いているうち、どうもいつもの電話相談とは様子が違うことに気がつきました。相談者の話を聞くというより、どの相談も「質問と答えの応酬」に終始してしまっているのです。
 たしかに薬剤師に限らず、いわゆる専門家と呼ばれる人たちは、質問を受けるとすぐに「答えねば、教えねば、(苦しみから)救ってあげねばならない」という脅迫観念に襲われてしまうようです。とにもかくにも一生懸命、持っている情報のすべてを機関銃のごとく一方的に提供することで会話を成り立たせ、なぜ「そのこと」が不安なのかの心の奥に関心をもってはもらえないのです。
 薬の不安の訴えは、単に相談のきっかけでしかありません。聞けば答えてくれるし、さらに聞いてもすぐまた答えが返ってくる。となれば質問をつぎつぎに考えないと話がつながらない。質問が途絶えたら終わってしまうと、焦るばかりで会話にならない……。こうして患者はいつも、どうでもいいような質問ばかりして医療者に嫌われてしまっているのでしょうね。